これまで私は「銀幕腕十字」で現UFCミドル級王者、アンデウソン・シウバのことを何度、書いたか憶えてないくらい取り上げてきましたが、今回はデビュー戦。
UFCの連勝記録である11連勝中(UFC参戦前の試合を入れれば12連勝中)のアンデウソンは先月、プロ・デビュー10周年を迎えました。
アンデウソンの全30戦のキャリアで黒星は4つだけですが、パウンドフォーパウンド最強と謳われる超一流のミドル王者のデビュー戦は何と黒星です。
アンデウソンのプロ・デビューは25歳と意外に遅く、2000年5月27の、幾多のブラジル人の強豪を輩出した伝説の大会、Mecca: World Vale Tudoの記念すべき第一回大会でした。
対戦相手は、アンデウソンのMMAの基盤を作った当時の所属チーム、シュートボクセに後に移籍してきてチームメイトとなるルイス・アゼレード。
PRIDE時代の五味孝典の全盛期を彩った超一流の弾丸ファイターです。あの頃の五味の幾多の好敵手達の中でアゼレードは私が一番、好きな選手。
アゼレード戦はプロ・デビュー戦ですが、ここの至るまでにアンデウソンが費やした子供の頃からのアマチュアの日々は約18年になります。
サンパウロで貧しい家庭に生まれたアンデウソンは4歳の時に経済的理由でクリチバの叔母の家に里子に出されます。
そして、従兄に連れられて行って興味を持ち、訓練を始める原点の学び舎が韓国人のテコンドーの道場。
お金がないので道場の掃除をすることで練習に参加することを許可されたのがアンデウソンの格闘家としてのスタートです。
その後、フェデリコ・フジマール率いるシュート・ボクセの支部道場でムエタイを学び、20代の頭に本部道場主催のムエタイのIn-House tournament(支部交流を兼ねた道場内トーナメント)で当時のシュート・ボクセのトップであったジョゼ・ペレ・ランディと2連戦します。
この道場番長、ペレとの激戦を一勝一敗の五分としたことで、はっきりと実力が認められて直後のアマMMAトーナメントに出場。三連勝で優勝しMMAファイターとしての第一歩を着実に踏み出しました。
そしてフジマールがプロモートしたMeccaの第一回大会にシュートボクセの有望株として出場し、"Brazil Free Style"という大会での準優勝を持ってプロデビューした後の三年ぶりの復帰戦となるルイス・アゼレードを迎え撃ちます。
しかし、この試合を1-2のスプリット判定で落としたアンデウソンは組み技を自分の穴として認め、グラウンド・ゲームの強化に取り組み始めます。
その後、当時、MMA20戦18勝2分けの無敗の修斗ミドル級王者、桜井マッハ速人に勝って新王者となるまでのアンデウソンはクリチバのマクドナルドでアルバイトしながら練習を積み、試合の時にはお休みをもらうフリーター・ファイターでした。
しかし、プロ6戦目でチャンピオンとなり、曲がりなりにも格闘技で食っていけるようになったというのは、かなりの強運であると言えましょう。
ちなみに"The Spider"の異名を取るアンデウソンの最大のアドバンテージは長い手足で、これまでの30戦のキャリアでスタンドの打撃勝負で懐に入られたことはただの一度もありません。
一般的にリーチというのは身長より数センチ長いぐらいです。
内藤大助もかなり長いリーチの持ち主ですが、身長188センチのアンデウソンのリーチは197センチです。アンデウソンなら身長プラス9センチというのは大した数字とは思えませんが何といっても股下がとんでもない(笑)。
テコンドーで格闘技に触れ、ムエタイを経てMMAにやって来た、手足の長さで対戦相手に劣ることがまずないアンデウソンはストライカーのイメージが強い選手ですが、実際はテコンドー、BJJ(Brazilian Jiu-Jitsu)、そして柔道でも黒帯を巻いており、カポエイラでも黒帯と同じ意味を持つ"Yellow Rope"を授かっています。
一言で言えば「穴がない」。
そして穴がないだけでなしに全ての要素で特出しています。「当てられたら打たれ弱いのではないか」という見方も出来ますが、過去にいいのをもらったデータがないので解釈しようがないのです。
アンデウソンの次戦は8月7日のUFC 117でのチェール・ソネンとの「真価を問われる防衛戦」で、この試合はプロ31戦目となります。
このタイトルマッチの勝者は、4月に挑戦が決まりながら練習中の負傷によりキャンセルをした「現在、最強の挑戦者」ヴィトー・ベウフォートの挑戦を11月に受ける予定になっています。
今年の4月で35歳になったアンデウソンはこれまでに、「現在の契約が切れたら引退」と公言してきています。
お金の問題ではなく、35歳で引退する、とも言っています。
「身体も気持ちもそろそろ闘うのをやめたいと言っている。身体も気持ちも家族といっしょにいたいと感じている」。
そして現在、UFCと締結している契約の残りは2試合。
すなわち、8月にソネン、11月にベウフォートと、最強の挑戦者を2タテにしたら計画通りに35歳での契約満了で引退となります。
しかし、最近になってマネージャーが、現在の契約満了の後、UFCが"The Biggest Fight"をオファーする限りは現役続行する、と発言しています。
とにもかくにも強大な相手への困難なチャレンジによってモチベーションを上げていくアンデウソンは、燃え上がるモチベーションを得られるマッチメイクならば、ライトヘビー級でもヘビー級でも、その中間のキャッチウェイトでも構わない、と言っています。
そういうことを聞かされるとさ(笑)、我々、ファンは、
アンデウソン対ヒョードル
って言いたくなっちゃうよな、おい(笑)。
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