1980年代の大半をティーンエイジャーとして過ごした人間が当時を振り返ってみた時に鳥肌が立つような恥ずかしさを感じるいくつかのキーワードの中に「ストーンウォッシュ」というものがあります。
ジーンズ、Gジャンの類いのストーンウォッシュ。
「ケミカルウォッシュ」も含みます。
今時のジーンズの「ヒゲ加工」も、あと10年、20年したら相当、恥ずかしい想いで振り返られることと思いますが一世を風靡したストーンウォッシュもかなりのものです。
私はストーンウォッシュ・ジーンズというのは1983年ぐらいに世に出たものかと思ったのですが、ケラリーノ・サンドロヴィッチの監督デビュー作「1980」(イチキューハチマル)に他の様々な1980年という年を演出する小道具とともに登場しています。
私は自分が小学校6年の時に既に存在したのか、と驚きました。
1983年の松田優作、薬師丸ひろ子の「探偵物語」でも白いコットンの裾の細いパンツやサマーセーターなどの当時を偲ばせるデザインの服に混じってストーンウォッシュ・ジーンズが登場しますが、1986年公開の「めぞん一刻」になるとストーンウォッシュよりも、めぞん一刻の住人の一人である四谷さんを演じている伊武雅刀の数種類の衣装であるDCブランドのスーツのシルエットと柄の方が80‘sチックな雰囲気満載です。
ちなみに「探偵物語」の冒頭では薬師丸ひろ子が通う大学で学生プロレスの興行が行われています。
この学プロのリングというのがロープがダルダルの緩みっぷりで、これもまた1983年の学プロ事情を偲ばせる小道具になっています。
千葉最強の牧師、オーハさんが宇都宮大学を卒業し宇大プロ研(UWF)のOBとなったのが1983年ですから「探偵物語」の学祭の季節に宇都宮大学ではオーハさんの後輩のタイガーマスク達が華麗に(ロープの反動を利用できずに)舞っていたことでしょう。
アメリカ映画でも"Boys Don't Cry"や"Johnny B. Goode"や"Three O'clock High"などの若者文化の映画でストーンウォッシュは登場しますが、私が一番、面白い使い方だな、とウケたのは2003年公開の大ヒット・ドイツ映画、"Good Bye Lenin!"です。
これは1989年晩秋のベルリンの壁崩壊前後の東ベルリンを舞台とした「笑えないコメディー」です。
笑わそうとしているけど、つまらなくて笑えないのではなくて、登場人物達の身になって考えれば「重くて」笑えないのです。
主人公は東ベルリン在住の母子家庭の長男の東ドイツ人の青年、アレックスです。
アレックスの父親は「まずは一人で西側ドイツに亡命し家族を受け入れる準備を整えて連絡する」という状況で単身で亡命して以来、10年以上、音沙汰がなく、母親はその悲しみと怒りと絶望感の反動で社会主義に心血を注ぐ活動家として活躍しています。
1989年10月7日の東ドイツ建国40周年記念日に、日々、エネルギーを持て余した多感な年頃のアレックスは反政府デモに参加します。
そして警察隊と衝突してモミクチャになっているところをあろうことか記念日を祝う立場の母親に見られてしまい、母はあまりのショックに心臓発作を起こして意識不明となり8ヶ月間に渡って昏睡を続けます。
8ヶ月後、前触れなく突然、母が意識を取り戻した時にはベルリンの壁崩壊から半年以上、経っており、「元」東ベルリンには津波のように西側の文化、経済が雪崩れ込み、かつてトラヴァントが走っていた道路ではメルセデスが行き来し、ビルの壁には西側の象徴であるCoca Colaの大看板が掛かるまでになっていました。
母が目を覚ました時、担当医師に「もう一度、大きな精神的ショックを与えたら命の保証はない」と宣告されたアレックスは母の命を守るために退院させて自宅に引き取り、近所中の人間に強要して母に「東ドイツは何も変わっていない」と思わせる小細工と演技の努力を続けます。
近所の子供達に小遣いをやって社会主義の歌を歌わせたり、映画監督志望の映像関係の友人にニセのニュース番組を作らせてテレビ放送に見せかけてビデオで見せたり、という幾多の涙ぐましい努力の一環が「アレックスと姉がベルリンの壁崩壊前まで着ていた、東ドイツらしいダサい服装をする」ということ。
アレックスがどこかから調達してきた「社会主義風ダサいファッションの服」の中で姉がひと際、嫌がって「こんなダサいの絶対ヤダ!」と叫ぶのがストーンウォッシュ・デニムのスカートです(笑)。
そういえばベルリンの壁崩壊の直前に大学のクラスメートが滅茶苦茶クセのある英語を喋る留学生の女の子にどこから来たのかを尋ねました。
彼女はGermanyと答えました。
尋ねた方のアメリカ人男子は極端な言い方をすると「自分が持ってる知識を全て放出してカッコつけるタイプ」のヤツで(笑)、やめときゃいいのに、
Which one?
とホザきました(笑)。「ドイツには東西あるのを知ってるぜ」とカッコつけた訳だ、こいつは(笑)。
彼女は呆れた顔で"If it's East, I wouldn't be here"と答えましたが、ホントにそれからほんの数週間ほどで統一ドイツが誕生したんだよねえ(笑)。
ちなみに私は、永瀬正敏の「20世紀カップヌードル」CMシリーズで一番、好きなのはブッチギリで「ベルリンの壁崩壊」です。

コメント