北野武監督最新作、"OUTRAGE"を観てきました。
日本のあらゆるメディアでカタカナ表記で紹介されているのでカタカナだと思っていたのですが実際はアルファベット全大文字での表記でした。
タイトルバックもかなりイケてます。私好みです。
劇場まで足を運んだ理由の51%は、どう考えてもヤクザ役に向いているとは思えない加瀬亮のヤクザ姿を見たかったからです(笑)。
私は加瀬亮が演じるヤクザとなれば、親の借金や親友の借金の連帯保証人などの、やむにやまれぬ理由で業界入りしたか、株やITに強い大卒インテリヤクザのどちらかのパターンだと予想したのですが、後者でした。
頭がキレて英語ペラペラの組の金庫番という役どころなのですが、特筆すべきは加瀬亮の英語。
今までに邦画、洋画に関わらず耳にしてきた幾多の日本人俳優の英語の中でマジでナンバーワンです。
アメリカに10年以上、住んでいる日本人でも作中の加瀬亮のレベルでパーフェクトな発音をモノにしている人はそう滅多にいません。
こう言っちゃなんだけど、TOEICのホームページで聞くことのできるSW(従来のマークシート方式ではなく実際に喋って文章をタイプする、実戦英語版のテスト=Speaking and Writing)の模範解答の発音よりずっとずっとイケてます(笑)。
で、"OUTRAGE"ですが、今作は15本目の北野監督作品です。
本人いわく、前作まで芸術系の作品を何本も続けて撮って飽きたし客は入らないのでヤクザ物に戻る、ということで原点回帰したヤクザ映画。
私は北野武の映画は好きだろうか?と自問自答してみると、決してファンということではないのですが、何故か何のかので15本すべて観ています。
理由としてはアメリカのレンタル屋で借りられるという点が上げられるでしょう。
フィラデルフィアで最も充実したインターナショナル・セクションを誇るレンタル屋、TLAの"Japan and Asia"のセクションにはTakeshi Kitanoセクションがあります。
この棚には監督作品だけでなくビートたけしとして出演した映画も多数、含まれるのでかなりの数が並べられています。
本数では、Akira Kurosawa, Yasujiro Ozu, Toshiro Mihuneの各セクションを凌駕しているかもしれません。
Kon Ichikawa, Nagisa Oshima, Tatsuya Nakadaiの各セクションよりは確実に数は多い筈です。
"Outrage"は北野武がヤクザ映画に戻った作品ですが、これまでのヤクザものの中で一番、近いのはデビュー作の「その男、凶暴につき」で、まさしく原点に帰ったカタチ。
あのデビュー作でたけしが演じたのは刑事ですが作品をカテゴライズするならヤクザものでしょう。
それと「向き不向き」で、最新作の"OUTRAGE"でたけしは初めて組長を演じると私は書きましたが勘違いでした。大組織の頂点に君臨する大親分の子供の組の若頭の下でした。
デビュー作の公開は1989年で、北野武はもう21年も監督やってるのか、アメリカで成人じゃねえか、と驚くばかりです。
そして最新作"OUTRAGE"は今までで最もパワフルで、私の中では全15本中のベストです。
いままでの作品でやたら頻繁に見られた「このシーンは果たして本当に必要だろうか?と勘ぐってしまう、作り手の自己満足の気配の強いオカズ」が一切なかったのが凄く良かった。どこも削りようのないシャープで痩せマッチョな作品です。
ただ、「よくまあ、こういうバイオレンスを考えつくものだ」と人間の負の想像力に恐れを成してしまった幾多のシーンはすべからく目をそらしました。
以前も書きましたが私は格闘技は大好きですがバイオレンスは生理的に駄目で、血はまだ我慢できますが傷は見られません。
"Inglourious Basterds"のラストシーンなど、まず直視できません(笑)。
「その男、凶暴につき」と「OUTRAGE」の共通点などを書いてしまうとネタバレになるので控えますが、デビュー作「その男、凶暴につき」から伝わってきたのは北野武の「俺は善人じゃねえし、世の中で人間が生きていけるの水が清くないからだ」という強烈なメッセージです。
当時、公開の少し後ぐらいに、たけしが山口美江とやっていたテレビのトークショーに武田鉄矢がゲスト出演した回をビデオで見ました。
武田鉄矢は長渕剛がテレビドラマの「とんぼ」でヤクザを演じたのと同様、たけしは「自分の好感度が上がってきたことに対する警笛としての行動」で「その男、凶暴につき」を手がけたのだと思うと語りました。
そして、たけしも「いい人」にはなりたくない、「いい人」だと思われていいことなんか何もない、特に男女関係においては「いい人」として扱われると「いい人」で終わってしまうので一線を越えることがない、と言いました。
それに対して武田鉄矢が語った「金八先生のイメージの弊害」が実におもしろく、六本木でホステスさんのお尻を触ったら「金八先生はそんなことしない!」と大泣きされたことがあるそうです。
となれば、「熱中時代」の水谷豊や、「スクールウォーズ」の山下真司も同じような有名税を払っていることでしょう(笑)。
ちなみに「その男、凶暴につき」でキレキレにヤバい存在感を放射しまくっていた白龍は、ハリウッドが描くヤクザ映画にぜひとも乗り込んでほしいと私が切に願う人です。

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