洋画が日本で配給される際に邦題が付けられることに関しては私は決して反対ではないのですが、どれだけ小さくともオリジナルのタイトルを劇場ポスターなりDVDカバーなりに必ず残すべきだと思います。
ポスターなら最下部、DVDなら裏面最下部の縦長アルファベットのオリジナル・クレジットではなしに、もう少し見やすい場所に、例えロシア語やアラビア語やハングル語のように判別不可能であったとしても残すべきだと思うのです。
邦題であると、はっきり分からない、あたかもオリジナルをカタカナ表示にしただけ、と勘違いしやすい邦題が多いので、オリジナル・タイトルは明記されてないと困ります。
先日、ファイティング・ドラゴン、戦闘竜のごとき分厚い肉体を誇る千葉最強の牧師・オーハさんとお会いした時にも話しに出たことなのですが、例えば、トム・ハンクス、ジーナ・デイビス、マドンナの"A League of Their Own"に「プリティー・リーグ」っていう邦題が付いてしまったら、100人中90人以上が、それがオリジナル・タイトルだと思うでしょう。
私は高校三年の時に宇都宮の劇場で観たシュワルツネガーの"Raw Deal"を久しぶりに観たくなってアメリカ初期に住んでいたテネシー州のレンタル屋に行ったのですが、邦題が「ゴリラ」だったため、「シュワルツネガーの"Gorilla"を借りたいのですが」と店員さんに言いました。
しかし、彼はそんな映画は知らないと言います。
知らないも何もシュワルツネガーのメジャーな一本なんだからレンタル屋の兄ちゃんが知らない筈はありません。
私はgorillaは100%まともに発音できてる自信はあるので、"It's Gorilla, O.K.? Gorilla. Gorilla. And it's Arnold Schwarzenegger's. It should be famous. You must know. Gorilla."と不毛なアピールを続けました。
実はタイトルが"Raw Deal"だと知った時は日本の映画配給会社を恨みました。
この手の「イメージに合わせた邦題」というのは、音楽だとメタリカの、
"Master of Puppets" →「メタル・マスター」
"...And Justice for All" →「メタル・ジャスティス」
に代表されます(笑)。
音楽のアルバムはカバー・デザインが大きくイジラれることはありませんが、それでも「メタル・マスター」、「メタル・ジャスティス」がオリジナル・タイトルだと勘違いしてしまう人もいるでしょう。
それならばいっそ、内容の善し悪しはどうあれ、邦題が付けられていることが完璧に分かるような、アイアン・メイデンの、
"The Number of The Beast" →「魔力の刻印」
"Piece of Mind" →「頭脳改革」
の方がマシじゃないかと私は思うのです(笑)。
大体、アイアン・メイデンのデビュー・アルバム、"Iron Maiden"なんて邦題が「鋼鉄の処女」ですよ。一体、誰が考えたのよ(笑)。学校に持ってくの、恥ずかしかったわ(笑)。
このように、コテコテに邦題だと分かる日本語のタイトルだと、オリジナルであると勘違いしないところが良いのですが、邦題の付け方にも流行りというのがあって、それはズバリ「語呂」と「単語」です。
1980年代には、やたらと叙情的でクドい邦題が流行りました。例えば、
"An Officer and a Gentleman" →「愛と青春の旅だち」
"Quadrophenia" →「さらば青春の光」
"Out of Africa" →「愛と哀しみの果て」
"Terms of Endearment" →「愛と追憶の日々」
などです。上記四本とも英訳は完璧に捨てて流行りの型にはめてるのに、何のかので作品イメージの範疇に収まっているのが凄いですね(笑)。
最近の流行りは、ちょい長めの「七五調」で、はっきりと「女にウケれば、それでいい!」という意図に基づいた邦画タイトル。
女性にウケれば、一緒に観に行く男の分も儲かるだろう、という目論見すら見える(笑)、カタの嵌めかた。
ここまでやるか!?のワンパターンのリズムです。
それと、私が個人的に00年代の10年間で最も爆発的に日本中に蔓延した言葉ではないかと強く思う「レシピ」という言葉はオンラインでも紙媒体でも、やたらと目につきますが、これも、いわゆる「ラブコメ」というジャンルの邦題に頻繁に使われます。
私としては、タイプするのも、物凄く恥ずかしいのですが、バババっと打ち出してみると、
"He's Just Not That Into You"→「そんな彼なら捨てちゃえば?」
"The Proposal"→「あなたは私のムコになる」
"Vicky Cristina Barcelona"→「それでも恋するバルセロナ」
"New York Serenade"→「それでも恋するニューヨーク」
"Dating Games People Play"→「そんな恋ならやめちゃえば」
"What happens in Vegas"→「べガスの恋に勝つルール」
"Hitch"→「最後の恋のはじめかた」
"When in Rome"→「みんな私を好きになる」
"The Shape of Things"→「彼氏がステキになったわけ」
"My Boss's Daughter"→「セレブな彼女の落とし方」
"Pas Sur La Bouche"→「巴里の恋愛協奏曲(コンチェルト)」
"Before Sunrise"→「恋人までの距離(ディスタンス)」
"Music And Lyrics"→「ラブソングができるまで」
"Ensemble, c'est tout"→「幸せになるための恋のレシピ」
"No Reservations"→「幸せのレシピ」
"Failure to Launch"→「恋するレシピ〜理想の男の作り方〜」
"Smart People"→「賢く生きる恋のレシピ」
"Mostly Martha"→「マーサの幸せレシピ」
ここまでの怒濤の勢いで馬鹿の一つ覚えが繰り返されてるって凄いと思いませんか? 私は思います(笑)。
どうも日本の洋画配給会社は、「恋/幸せ、レシピ、七五調」が女性向けの宣伝の「三種の神器」だと思っているフシがあります。
"He's Just Not That Into You"などは私は英語のオリジナルタイトルのセンスがいいから観たのですが、「そんな彼なら捨てちゃえば?」となると、ちょっと観る気になりません。
それと、「賢く生きる恋のレシピ」なんぞと来た日にゃあ、デニス・クエイドが衣装の下に詰め物をして初めて「腹の出た冴えない中年」を演じた"Smart People"という実にインテリジェントな作品が汚された気さえします。
私としては、「そんな題なら、やめちゃえば?」と言っちゃいたい(笑)。
そして邦題の一つのパターンとして非常に困るのが、上記、「プリティー・リーグ」や「ゴリラ」のような、オリジナルだと信じてしまうパターンで、これもまあ、実に沢山あります。
ババッとリストアップしてみると、
"Crank"→「アドレナリン」
"Until Death"→「ディテクティヴ」
"Walk of Death"→「レクイエム」
"Stauffenberg"→「オペレーション・ワルキューレ」
"View From The Top"→「ハッピー・フライト」
"Up in the Air"→「マイレージ、マイライフ」
"No Retreat, No Surrender"→「シンデレラ・ボーイ」
"Death Warrant"→「ブルージーン・コップ」
"Rocky Balboa"→「ロッキー・ザ・ファイナル」
"Chaplin"→「チャーリー」
"Banlieue 13"→「アルティメット」
"Metro"→「ネゴシエーター」
"Bowfinger"→「ビッグムービー」
"Unleashed"→「ダニー・ザ・ドッグ」
"Capone"→「ビッグ・ボス」
"Avenging Angelo"→「ザ・ボディーガード」
"Medicine Man"→「ザ・スタンド」
"The Forbidden Kingdom"→「ドラゴン・キングダム」
"Cradle 2 the Grave"→「ブラック・ダイヤモンド」
"One Hour Photo"→「ストーカー」
"Swing Vote"→「チョイス!」
"Norbit"→「マッド・ファット・ワイフ」
特に「ロッキー・ザ・ファイナル」は、もしも、もう一本、作ったら「宇宙戦艦ヤマト」なみに嘘つきになってしまいます。

タイプするのも恥ずかしかったと思いますけど、読むのも大赤面ものです(上のブロック)。
こうして一挙に羅列すると凄まじいですね。
ところで我がPHLが舞台の、Gerard Butlerの魅力炸裂の
"Law Abiding Citizen"という映画がありますけど、これなんかどういう邦題が付けられるのか。「復習の彼方に」?主人公の名前を取って「クライド・シェルトン」?
何れも早い段階での思考停止が匂ってきそうです.. .。
この映画、色んな意味で印象深かったです。
投稿情報: TMKZ | 2010/03/23 20:12
「我が法なり」とか。
ちなみに、このGerard Butlerの"The Ugly Truth"の邦題は、「男と女の不都合な真実」だぜ(笑)。
投稿情報: たしん | 2010/03/23 20:30
「男と女の不都合な真実」...。
もうあっぱれと言いたいですね。
時期的にはアル・ゴアがノーベル平和賞をとった頃の作品ですか。
こうなったらたしんさん、逆に「ナイスな邦題」というお題で一本お願いします。
投稿情報: TMKZ | 2010/03/24 14:41
その昔、椅子からズリ落ちたのが『普通の人々』(Ordinary People)の邦題でした。仰せのとおり80年代は「愛の大安売り」的な邦題が目立ちましたね。吾が悪友、えんぢぇる・田中牧師(元映像作家)もブログで嘆いていたのを思い出しました。
『好き邦題』
http://www.goodnewsstation.com/article.php?article_id=236
投稿情報: M | 2010/03/24 17:56
TMKZさん:
そうね、"Inconvenient Truth"の邦題をパクったとしか思えないね。
でなきゃ、uglyが不都合になりようがないでしょ。
「ナイスな邦題」ですか。難しいわ。
Mさん:
「普通の人々」は私はいいと思いますよ。かなり。
"Ordinary People"をカタカナにすると、「ピープル」でも「ピーポー」でも滅茶苦茶、軽くなっちゃうじゃないですか。
無理矢理、ひねらずに直訳がカタチになるなら、それが何よりだと思います。
"Ordinary People"の場合、内容を知らせようとして自殺という言葉をねじ込むのが最悪のパターンだと思います。
投稿情報: たしん | 2010/03/24 18:32
先日、ひょんなきっかけで、「バタリアン」のDVDを観ましたが、「あ! これも、たしんさんが言うトンデモ邦題だ!」と気づきました。
ご存知ですか、「バタリアン」。1980年代に作られた、ゾンビもののホラーコメディです。これって、原題は“Return of the Living Dead”なんですよね。日本の配給会社が、「バタリアン」ってつけたんでしょう。なんで「バタリアン」?
でも、不思議なことに、今ではこれがしっくりきていて、「バタリアン」以外、考えられません。
ちなみに、特徴的なゾンビには固有名詞がつけられていましたが(登場人物が、「地下室にタールマンが!」とか、「オバンバだ!」と叫んでいました)、これも配給会社が勝手につけた模様。
なんちゅうセンスだ!
投稿情報: オーハ | 2010/03/31 03:42
ホラーものは実に多いです。やたらと「死霊」のナントカとか(笑)。
エルム街と13日の金曜日は滅茶苦茶まともですよ(笑)。
逆に"SAW"はカタカナ表記だと「ソウ」でもキツいし「ソー」だと最悪なのでアルファベットの"SAW"のままが通らないなら思いきって「刃」とつけちゃった方がいいと思いますけどね。
投稿情報: たしん | 2010/03/31 20:42