かの有名なシアター・ミュージカル、"MAMMA MIA!"が映画化されて一昨年の夏に公開になった時、私はフィラデルフィアのバス停の広告ポスターを来る日も来る日も眺めながら、一向に観る気になりませんでした。
理由は、単純に興味を引かれなかったという以外に、ポスターの一番、目立つ位置にPierce Brosnanがいたというのが大きいと思います。
この人はオバさん受けはするでしょうが、男にモテるタイプの俳優ではないので、私は無意識下で「おめーは、007を引退したらテレビでメロドラマでもやってろ」と思っていたのでしょう。
しかし、最近、プロットを読んでみたら「こんなに、おもしろそうな話しだったのか!」と驚き、DVDを借りて観てみました。
主人公はギリシャのとある島でホテルを営むシングルマザーの母と娘で、娘は自分の父親に会ったことがなく、どこの誰かも知りません。
娘、ソフィーの結婚式が近づいた、ある日、彼女は20年前の自分の誕生日から約10ヶ月前の母の日記を発見し読みます。
その日記によって彼女は生物学的に自分の父親である可能性を持つ男性が三人いることを知ります。
そして母に内緒で三人それぞれに結婚式の招待状を送り、三人とも島にやってきて、さあ、どれが本当のお父さんか?という話し。
招待状の送り先の住所が何故、分かったか?などという野暮は一切、無視(笑)。
いや、これは本当に楽しい映画でした。話しも面白いし、開放感に満ち溢れてカラフルな絵は、ミコノスなどのギリシャの島に一度は行ってみたいものだ、と常々、思っている私には実に刺激的な美しさです。
私が脚本家のセンスの高さを強く感じたのは、ソフィーが親友二人に黙って持ち出した母親の日記を読んできかせるシーンの台詞のやりとりです。
We danced on the beach. We kissed on the beach. And, dot, dot, dot.
"dot, dot, dot"は、...のことで、日本語字幕では「点、点、点」になっていたことでしょう。
要するに子供が出来得る行為をはっきりと書かずに恥じらいと慎ましさを持って、...と書いている訳です。
ここで、親友は"What? What's dot-dot-dot?"と訊くのですが、ソフィーは、「だから、昔の人はこういう書き方をしたのよ(笑)」と言い、三人で「キャ〜〜!」と爆発的に盛り上がります。滅茶苦茶、笑いました。
実のところ、この"MAMMA MIA!"のDVDは、ごく最近、映画館で、とてつもなく下らない邦画の封切りを観たすぐ後の鑑賞でした。
「いやはや、下らないpiece of junkだった」と思って席を立ち、忸怩たる想いで出口に向かっている時、奥さんと観ていたと思われるオジさんの声が私の肩越しに「やっぱり、日本の映画は駄目だわな」と呟きました。
私は心中、「いやいやいや、こんなのばっかじゃねんだよ。おもしろいのも、いっぱい、あんだよ」と思いつつ、「こういうことを言うヤツに限って映画自体、滅多に観ねんだよな」とも思いました。
「アメリカ生活が長いから日本語、忘れちゃった」とかヘラヘラと抜かすヤツに限って英語もロクに喋れないのと同じ(笑)。
しかし、考えてみれば声から察するオジさんの年齢を考慮すると、字幕を読むのは相当しんどいだろうと思われるので、「やっぱり、日本の映画は駄目だわな」と思って敬遠したら映画館に足を運ぶこと自体、無くなってしまうでしょう。
これは、かなり悲しいことで、あの下らない邦画の罪はかなり重いと言えましょう。
とまあ、こういう業深い経験をした、すぐ後に"MAMMA MIA!"を観たもので、「オジさんの言うことにも一理ありだなあ」と感じたのです。
しかも日本映画がアメリカに、Sci-Fi以上にまず勝てないジャンルであるミュージカルでしたから。
でも明らかに若年層をターゲットにした映画を観たオジさんが「日本の映画」のせいにするのも、どうかと思いますけど(笑)。
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