昭和40年代全般に渡り、キックボクシングの一大ブームの最中心部で活躍した「キックの鬼」、沢村忠という人は力道山の再来とでもいうべき国民的英雄でしたが、私にとってはリアルタイムで熱狂した存在ではありません。
試合映像をかなり観ても、時代を偲ばせる一発狙いで大味な単発の攻防が多いので、正直、私好みではなく、ずっと「そういう人がいた」という存在でした。
その見方に変化が起きたのは数年前の前田日明のインタビューを読んだ時で、前田が還暦ぐらいになっていた沢村忠にお会いした時、現役時代と体型が全く変わってなくて驚いた、と書いてありました。
私は、少し前までK-1のメイン・レフェリーを務めていた猪狩元秀(ブレイクの時に膝を突っ込みながら割って入る人)のように、現役引退後、何年、経っても服のサイズが変わらない、常にグッドシェイプを保っているオジさんを物凄く尊敬するタチなので、無条件で「それは凄え」と感嘆しました。
後に、沢村忠本人が格闘技雑誌の健康食品の広告とインタビューで登場したことがあり、確かに顔の皺と髪の色以外、現役時代と変わらない佇まいに少なからず驚かされました。
沢村忠という人は現役引退後、テレビ中継の解説なども含め、メディアに全く出なくなった人だそうで、「酒で廃人同然になった」とか「ヤクザの用心棒になった」とか「死んだ」などの噂が一人歩きしていたそうですが、とりあえず暴飲暴食とは無縁であることは、その見事なシェイプを保った肉体が証明しています。そもそも、アルコールは全く受け付けない体質だそうです。
そして、そのインタビューはかなり興味深い話しだらけだったのですが、一番、印象深いのは、ムエタイ選手との連戦において、いかにローキックのダメージを回復させるか、という下り。
当時の週に一試合などという超絶ハイペースに合わせたローのダメージの抜き方は、何と、試合後に炊きたての米をサラシでくるんで、太ももとふくらはぎに押し付けるのだそうです。
ゆっくりとマトモに回復させる時間がない場合、これに限る、とのこと。伊達や酔狂じゃあ、とてもじゃないけど務まらない厳しい世界です。
さて、前項で書いた、日本代表・高倉健の主演作、「ごろつき」には健さんが下働きからトレーニングを始めるキックボクシング・ジムの先輩として沢村忠が特別出演しています。
そして、ヘヴィーバッグ打ちを披露するシーンがあるのですが、私、何度も何度も繰り返して見てしまいました。
アップライトのオーソドックスから、何と、右のジャブ→左の肘、のコンビネーションをやらかすのです。
これは、たまげました。何度も繰り返し見て自分でやってみても、沢村のようなパパンと打った後のスムーズなステップバックには、まず繋がりません。
あのバランスは一体全体、何事だ!?
「ごろつき」は、はっきり言って、このシーンだけでも見た価値はあったのですが、これに加えて「健さんと菅原文太の流しデュオ」ですから、「ファン垂涎とはこれを言う」という満足度でした。マニアックな満足度ですけど(笑)。
ちなみに、沢村忠の試合映像から、たまたま、見つけたのですが、「ごろつき」の中のヘヴィーバッグ打ちはYoutubeで見ることが出来ます!
「沢村忠 映画出演での一コマ」で検索しましょう。1:26秒の動画です。
そして、あの動き、やってみてください。難しいよお。
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