1998年公開の「愛を乞うひと」という映画の中で主演の原田美枝子は三役をやっています。
まずは1998年において、高校生の一人娘を持つ中年女性。この中年女性は子供の頃、筆舌に尽くせぬ虐待を母親から受け続けた過去を持っています。
次にこの中年女性が子供の頃の母親、すなわち1998年の自分とほぼ同世代だった頃の虐待鬼母。
そして、その虐待鬼母の1998年のお婆さんの状態。
作中、現代の中年女性とその老母が二十数年ぶりに再会するシーンがあり、作品のクライマックスの宣伝文句として「現代のコンピューター・グラフィックの最高技術を結集して作り上げた特撮シーン」と説明されています。
また、市川崑が1996年に自身でリメイクした豊川悦司・金田一耕助の「八墓村」でも、並んで座って喋る双子の老婆・岸田今日子、という幻想の如き、はっきり言えば気味の悪いシーンが出てきます。
が、しかし、この二本の「同一カットでの一人二役」よりも私が「お見事!」と言いたいのは、生き別れになった双子を岩下志麻が演じる1963年/昭和38年公開の「古都」です。
オーソン・ウェルズの"Citizen Kane"の老けメイク同様、新しい映画の新しい技術がかなわない説得力をもって若く美しい双子の岩下志麻が見つめ合い、ともに歩き、喋り、雨に打たれ、並べて敷いた布団に横になり、それぞれの結婚について語ります。
温故知新ではすまない技術水準です。
「古都」は川端康成原作の京都を舞台にした物語です。
岩下志麻ほど、「おこしやす」、「おおきに」、「よろしおすな」、などの京都の女性の台詞、そして真打ち「いけずやわ」が似合う人もいないのではないでしょうか。

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