映画の役作りのための減量があれば「増量」もあります。
これは何と言っても、"Raging Bull"と"The Untouchables"のロバート・デニーロが代表選手。
1980年公開の"Raging Bull"では実在の元ボクシング・ミドル級世界王者、Jake LaMottaの光と陰を演じています。
この映画でデニーロは、現役ミドル級ボクサーと、その引退後の姿を演じていますが、現役時代の分の撮影を終えてから、引退後(多分、20年後)のシーンの撮影に臨むまでに実に27キロ増量しています。
この徹底的な役作りの拘りが、後に映画業界の有名な専門用語となる"DeNiro Approach"です。
1987年公開の"The Untouchables"では恰幅の良さで有名なマフィアのアル・カポネを演じました。
この時は増量にかける時間が十分でなく(笑)、「目に入る食べ物すべてを口に入れて太った」というインタビューを読んだことがあります。
それでも目標の肥満体型まで持って行けず、前頭部の生え際を丸く脱毛して少しでも丸顔に見せようとしたとのこと。まさにDeNiro Approach!
このインタビューは"interview"という雑誌の日本語版に載ってたのを15年ぐらい前に読んだのですが、凄く面白かったのが"The Untouchables"撮影中に舞い込んできた出演オファーの逸話です。
アル・カポネ体型での撮影中のある日、結果的にウィレム・デフォーがやった"The Last Temptation of Christ"の出演オファーがあり、「この体型でジーザスが出来る訳ないだろう」と断ったそうです(笑)。
正直、私は、もの凄く物議を醸した"The Last Temptation of Christ"の内容はほとんど憶えてないのですが、ウィレム・デフォーのジーザスの出で立ちは、かなり印象的でした。
あと、「憑神」の赤井英和も相当、増量しましたね。
それと、役作りという言葉は当てはまらないけど命がけの増量だったのが"Supersize Me"の主演/監督のMorgan Spurlock。
これは古今東西のドキュメンタリー映画の最高峰の一本であると私は言ってしまいます。
モーガン・スパーロックがテレビでやっていた、自らをキャストしてのリアリティー・ショーの「ひと月もの」シリーズの発展形がこの映画です。
「ひと月間、朝昼晩、マクドナルドで食事し続けたら人体に、どのような影響がでるか?」を自らが実験台となって記録するシャレにならない危険なドキュメンタリーです。
ただの糖分、脂肪分に加えて、三食、trans fatが体内に入ってくる訳ですからマトモな生活を続けられるはずがありません。
おもしろいのは撮影開始前に決めた方針、"Do you wanna supersize your meal?"と訊かれたら絶対に断らない、というところ。
結果的に、ひと月間で体重は24.5パウンド(約11キロ)増え、体脂肪率は7%アップ、肝臓は脂肪のつき過ぎで炎症を起こし、ガールフレンドとの性生活にも支障をきたし、撮影前から様々なモニタリングをしている三人のドクターの一人に真顔で「こんなこと、すぐに止めないと、あんた死ぬよ」と言われるに至ります。
あと数日でゴールの一ヶ月というところまで来ると階段を数段、登って疲れて溜め息をつき「死にたい顔」になって、ガールフレンドには「お願いだからやめて」と泣かれます。
元の体重に戻すのにかかった時間が約一年半。
これは「役作りの増量」ではなく「無謀な挑戦の代償」と言えるでしょう。

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