「全然」。
今回の「時代を演出する小道具」は物ではなく言葉です。
「全然」という形容副詞は、本来、否定形の前に来るべき日本語だった筈ですが、今では何の疑問もなく肯定形の単語/文節の前に使われるようになってしまいました。
平たく言えば、「全然、できない」と使われるべきところが「全然、無理」とか「全然、大丈夫」になってしまったということです。
私個人的には初めて、このパターンを聞いたのは十年ほど前で職場の若い衆だったと思います。
彼がよく使っていたのは「全然、オッケーすよ」とか「全然、美味しいです」などなど。
当時は「そりゃ、おかしいだろう」と指摘することもあったのですがキリがないのでもう何も言いません。
「全然、イケてますって!」あたりになると奇妙に心地よい脱力感に襲われます(笑)。
宇都宮のサーフショップ(考えてみれば、ここは海なし県)にぶらりと入ってカッチョいい長袖Tシャツを買った時、イケメン・ロン毛の若い店員さんに「俺、サーファーでも何でもないけど、これ着て怒らんない?」と訊いたことがあります(笑)。
彼は「ぜーんぜん、オッケーっすよ。僕なんか泳げませんからね」と言いました。ヤツはなかなか、好感度が高かったぞ(笑)。
三池崇史監督の「ゼブラーマン」では小学校の教師で学年主任の要職にある哀川翔がボソッと「全然、忘れてた」と言います。
脚本を書いたのが天下の宮藤官九郎ですから、この台詞には「こういう言い回しって、今じゃ普通になっちゃったんだよ」というメッセージが込められているように感じてなりません。
浅野忠信主演の「誰がために」という映画でも、写真館の主である浅野忠信が新妻のポートレートを撮る際、髪型を気にする妻に「お〜、全然、いいって」と声をかけます。
あれも、浅野忠信の世代を演出した台詞なのか脚本家が深く考えずに出てきた表現なのか、非常に気になるところです。
一番、凄いのはタイトルそのまま「全然大丈夫」という映画(笑)。
これは2008年公開の、「脱力系コメディー」と紹介されている、本当に税金とか営業成績とか経済危機とかの難しい事が頭から溶け出して無くなってしまう、弛緩した空気に満ちたコメディーです。
最近のアメリカの若者の口癖で言えば、"Whatever"なカンジ。であるけども決して、やる気がない/ふてくされている訳ではないのです。物凄く前向きなのです、ホントに(笑)。
出演は、ついに主役!の荒川良々!と木村佳乃と岡田義徳が主演の上三人。次の三人が田中直樹と蟹江敬三と、きたろう。
面白そうでしょう(笑)。滅茶苦茶、おもしろいです。最高、笑えます。
この映画タイトルの「全然」は、「今時」と「脱力」という二つのキーワードをある意味、これ以上ない説得力で演出しきったと言えるね(笑)。
ちなみに、この映画は極私的に木村佳乃という人の、出演全22作品中、私が観た13作品の中でブッチギリでBest of the Bestです。

私も「全然」の新しい使い方が出始めたころ「それ変じゃない?」って
言ってたんですけど、今では使っちゃってますね…。
>「全然、イケてますって!」あたりになると奇妙に心地よい脱力感に襲われます(笑)。
↑これ、すごく笑ってしまいました!状況と心境がわかるわかる(^▽^*)
「全然大丈夫」という映画、観たくなりました♪
投稿情報: 夢子 | 2010/01/26 15:39
「全然大丈夫」はオススメです。ホントに笑えます。
「みかん」とか「お茶」とか「タイヤキ」などを用意して観るのがいいかと思います。
私が思うに「全然」はまだマシな方で、かつて私は職場で「ていうか」使用禁止例を出していました。
投稿情報: たしん | 2010/01/26 16:54
私が数年前から気になっていたのは、若者の「わー」という接頭語。たとえば、こんな具合。
「大学の学部はどこ?」「わー、教育学部です、いちおう」「じゃあ、将来は先生になるの?」「わー、はっきり決まってませんね、まだ」
これ、なんだかわかりますか? 「わー」は助詞の「は」なんです。
つまり、「(学部)は、教育学部です」「(教師になるかどうか)は、決まってません」という意味。
初めて聞いたときは、日本語の乱れを嘆いたのですが、最近、自分も時々使っていることに気づき、愕然!
投稿情報: オーハ | 2010/01/27 19:13
お〜!確かにありますね。気がつきませんでした。
これから先、相当、気になりそうです。
買い物、外食の際の「10,000円からお預かりします」の「から」って何だい?って訊きたくなること、ありませんか?
あと、ラーメン屋で「とりあえず餃子二枚と生ビール」とオーダーして、運ばれてきて「ご注文、以上でよろしいでしょうか?」と言われると「だから、追加するって」と思いつつ、「今は」と答えます。
それと日本語の乱れとは関係ありませんが、世界有数の嫌煙家である私が禁煙の店を求めて彷徨う時、店に入って「ここ、煙草、吸わすの?」と訊くと、ほぼ100%、「大丈夫ですよ」と言われます(笑)。
投稿情報: たしん | 2010/01/27 20:10
「全然大丈夫」、家の近くのMOVIXで見ました!
男なら「ダイ・ハード」、女ならこの映画の木村佳乃と言わんばかりの「世界一運の悪いやつ」ぶり、そして木村佳乃との生活を妄想して身悶える荒川良々とか面白いですよね。
あと、観終わるとチクワが食べたくなります(笑)
ものすごく脱力した映画ですが、三十路を前に悶々とする主人公たちの心情は身につまされるところがありました。
投稿情報: チナスキー | 2011/09/11 22:56
この作品がシネコンでかかっていたというのがそもそもオドロキです(笑)。
古本屋のオヤジって、ある意味、誰もが一度は憧れる職業のひとつであるような気がします。
投稿情報: たしん | 2011/09/11 23:26