私は19年ばかり板前をしていた人間なので映画の中の料理のシーンには細かく目が行きます。
料理ではなくとも魚屋さんや漁師が魚をサバくシーンにも細かく目が行きます。
昨今は料理を題材にした映画が相当数、作られ、メインで料理を扱った映画でなくとも料理のシーンは頻繁に目につきます。
魚をサバくシーンなどに顕著な、手元の撮影差し替えなしで「いい腕っぷり」を映画で披露している役者は誰か?
私が殆ど見ないテレビドラマもアリで考えると、昭和50年代の倉本聰・脚本の「前略、おふくろ様」で東京・深川の由緒ある料亭の向こう板を演じている小松政夫の「チャッチャッチャッ」とした手つきが随一です。
あのドラマはパート2まであるのですが、両方とも全編、日本人の友人が日本のレンタルビデオ屋のダビング・サービスで揃えたものを借りて観ました。
そして、一作目を毎晩、帰宅後に観ていた時期というのは私は主人公の三番板前のショーケン(萩原健一)と同じ24歳だったので、かなり思い出深いドラマです。
さて、映画に限って、「役者本人が」料理しているシーンを考えれば、「美味しんぼ」の佐藤浩市、"Frankie & Johnny"のAl Pacino、「かもめ食堂」の小林聡美、"Dinner Rush"のEdoardo Ballerini、「しあわせのかおり」の藤竜也と中谷美紀、「南極料理人」の堺雅人、などが思い浮かびますが、私の意見で一番、手つきがいいのは、「弁当夫婦」の永作博美です。
この「弁当夫婦」は、"R246 STORY"という六人の映像作家の短編を集めたオムニバスのうちの一遍で、監督はユースケ・サンタマリアです。
作中、永作博美は自分とユースケ・サンタマリアの二人分の弁当を手間ひまかけて毎日、作るのですが、だし巻き玉子以外は、なかなか、いい手つきだと思いました。
ただ、このキャラクターは自宅キッチンでの一仕事の後に換気扇も回さずに一服つけるので、見てる方としては「せっかくの奇麗な髪をヤニ臭まみれにしちゃって台無しだ」と、料理の腕で上がった評価を地に落とします。
さて、反対に「滅茶苦茶、下手クソな料理シーン」というと何と言っても忘れられないのが、私が敬愛してやまぬ阪本順治監督のリメイク版・「傷だらけの天使」の豊川悦司!
別に作中の豊川悦司は料理人でも何でもなく、無頼なチンピラ私立探偵が成り行きで他人の子供にヤキソバを作ってやるシーンなので、むしろ下手であることが望まれます。
豊川悦司という人は器用に包丁やフライパンを使いこなしそうな雰囲気があるので、配役のキャラクターに合わせた料理下手な演技をしたのではないかと私は予想するのですが、それにしても、あっぱれな下手ックソぶり(笑)。
子供に向かって「ヤキソバ、作ってやるぞお!」とか「見てろよお!」とか威勢よく喋りながら、あっちこっちに色々、飛ばしつつフライパンをガチャガチャやるんだけど、右利きの人間がフライパンを右手で持ってる時点で救いようがない(笑)。
あと、いくら何でも非現実的にすぎるシーンが「流れ板七人」という、全編を通して笑っちゃう映画のラスト近くにあり、開いた口が塞がらない下らなさでした。
和食の神様のような存在の親方が、何がしかの儀式で見せる技なのですが、座布団に正座した正面1メートルぐらいのところに、撮影用にあらかじめ二つに割った鯛のお頭をくっつけて置いておき、右手一本/片腕で日本刀で真っ二つに切り分けましたという大茶番!

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