私がこれまで一番、多く回数を観た映画というのは、"Sid And Nancy"で、22回です。
後に監督作、出演作をマメにチェックするようになる、Alex Cox監督と主演でシドをやったGary Oldmanの二人の逸材の初体験でもありました。
知らない人も多いと思うので説明しますが、"Sid And Nancy"というのは、Sid ViciousとNancy Spungenのことで、シドは元Sex Pistolsのベーシストでイギリス人、ナンシーはシドのガールフレンドでアメリカ人です。
明日を考えぬ乱痴気騒ぎの末に、二人とも重度のドラッグ漬けとなり、70年代の終わり、ナンシーが20歳、シドが21歳の若さで死に急ぎました。
二人がアパート替わりに住んでいたマンハッタンのチェルシーホテルで大喧嘩の末の錯乱状態でシドがナンシーをナイフで刺し、出血多量でナンシーは亡くなったというのが定説です。
警察の取り調べで、シドは殺すつもりはなかったが刺したのは事実で、その後、ドラッグを仕入れに一人で街に出たことも認めています。
シドも勾留中の自殺未遂の後の保護観察期間中にOD(薬物多量摂取)で亡くなってしまったので、チェルシーホテルの一室で何が起きたかは状況証拠で推察するしかありません。「シドは本当に有罪なのか?」をテーマにしたドキュメンタリー映画もありますが、私は正直、見たいと思わないのでタイトルも正確に憶えてません。
なんというか、"Cinema Paradiso"という傑作に与えられた本当に大きな感動に、変におせっかいな味付けをしてほしくないから、DVDリリースされている別ヴァージョンを観ないのと同じで、ナンシーの死の真相を探るドキュメンタリーは私にとって鬼門なのです。
監督、アレックス・コックスは、この映画をこう紹介しています。
Sid and Nancy really hung together like a decadent Romeo and Juliet.
They were doing something really stupid, but they were in love.
若い時分には私の友人にも、とことん激しく愛し合っているが故に年中、トラブルを起こして周りを巻き込み、お互いの嫉妬で刃物すら登場したこともある男女がいますが、彼らが道を踏み外していれば"Sid And Nancy"になっていたかもしれません。
アレックス・コックスが言う通り、シドとナンシーは狂気に満ちた生活の中で狂ったように愛し合っていました。
ポスターデザインはマンハッタンの裏路地で、周囲のアパート住人が投げ捨てるゴミが降りしきる中でのシドとナンシーの接吻です。これは世間と相容れない二人の世界、映画全体を凝縮したワンシーンで、本当に息が止まるどころか心臓すら止まるような、目が釘付けになる美しいシーンです。
フィナーレも、この映画を締めくくるに、これ以上の素晴らしい、美しいシーンは考えられないだろう!という完璧さ。
銀幕の歴史上、かなり上位に位置づけられるエンディングでしょう。
ナンシーは我が街フィラデルフィアの郊外の出身です。
私がフィラデルフィアの芸大で油絵を描いていた頃、三年間、同じ学部の仲間だった連中の中に、普通の学生よりは、かなり年上の女性がいました。
彼女は旦那さんの理解と協力の下、三人の子供を育てながら、かつて一年だけ在籍した母校を卒業するために二年次再入学で大学に通っていた努力の人です。
彼女の話しだと、かつて一年だけ在籍していた当時にシドとナンシーの事件があり、クラスメートの中にナンシーの妹がいて大騒ぎになったのだそうです。
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