私の友人の何人かは、大竹しのぶというと真っ先に森田芳光監督の「黒い家」の、おっかないオバさんを思い浮かべるそうですが、あれは確かに恐かった。
私は、あの映画を観る前に原作を読んでおり、夜、恐くてトイレに行けませんでした。
韓国人の友人の一人はハングル語で原作を読み、同じく震え上がったそうですが、私はおせっかいにも「多分、ハングル語では鰻になってるだろうけど、あの包丁は鱧(ハモ)だからね、鱧切り包丁」と教えてあげました。
原作のオバさんに比べると大竹しのぶという人は奇麗すぎるのですが、あの映画の中の凶気は、本人の何パーセントかの「素」なのではないかと思わせる迫力に満ちていました。
私は大竹しのぶという名前から最初に思い浮かべる映画というのは緒方拳主演の「鬼畜」(英題:"Demon")です。
人情コメディーと社会派サスペンスの二刀流、野村芳太郎監督の1978年の作品、大竹しのぶが二十歳そこそこの時の一本です。
ラスト近くに、父・緒形拳に殺されかけ一命を取り留めた男の子が怖がらずに喋れるよう駆り出される若い婦警さんが大竹しのぶです。
私は「大竹しのぶって、こんなに可愛らしかったのか」と驚き、考えてみれば、「鬼畜」の前年の二十歳の時の「男はつらいよ 寅次郎頑張れ!」の中村雅俊の相手役の時も「世の男に、守ってやらなければと思わせる」タイプの可憐で明るいキャラクターであったと納得しました。
大竹しのぶの、健気で可憐で可愛らしい女性というキャラクターは1984年の「麻雀放浪記」の鹿賀丈史のカミさん役ぐらいが最後だったのではないかと私は思います。
いわゆる、父性本能のようなものをくすぐる、可愛らしく儚いキャラクターはこの辺まで。
明石家さんまが「撮影中に結婚を決意した」という、1988年の「いこかもどろか」では、可愛らしさとともに、したたかさも、かなり見え、1992年の「夜逃げ屋本舗」では、私以外でも多くの人が「こりゃあ、ミスキャストだろう!」と思ったに違いない冷徹な切れ者を演じています。
1992年の「死んでもいい」になると、年下の男との不倫、並びに夫殺しの共犯という、可愛らしかった頃からは考えられないことをしでかし、1996年には、大竹しのぶという女優が激しくカッ飛んだ節目ではないかと私が思う、「GONIN 2」が公開されます。
「GONIN 2」で大竹しのぶは30代の終わりのセーラー服女というタダゴトじゃない変人を生き生きと演じており、このキャラが以降の「黒い家」の「鱧包丁ぶんまわし殺戮ババア」や、「クワイエットルームへようこそ」の「精神病院入院病棟の手癖の悪いオバハン」などに繋がって行きます。
「GONIN 2」以降は、スーパーエキセントリックなオバハンか、「可愛らしく、したたか」で、「どっこい生きている」というタイプの母親の役がほとんどです。
特に、「学校Ⅲ」、「GO」、「キトキト!」の三本の母親は一貫して、「人生全般現役」な、「This is 大竹しのぶ style!」を大いに感じます。
大竹しのぶという人は可愛らしさが根底にあるので、まごうことなき狂人の役以外は、口汚く横柄で身勝手な女性を演じても下品にならない。これが強みでしょう。
最後にひとつだけ言わせてもらうと、「石内尋常高等小学校 花は散れども」で、「いくら何でも、大竹しのぶと豊川悦司が同級生の役をやるわけじゃあ、あんめえな」と思いつつ観てたら、バリバリ同級生の初恋の相手同士でした。
ちょいと、無理あるだろう(笑)!

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