ラーメンだましい、とは読まずに「ラーメンこん」と読んでください。
「闘魂伝承」と同じです。
私は常々、アメリカで普通のアメリカ人が英語字幕付きで入手/レンタル可能な、ありとあらゆる日本映画の中で、最高峰は故・伊丹十三監督の最高傑作、「タンポポ」であると言っています。
私自身も十数回、観ていますが、国籍を問わず、二十人以上の友人達にビデオを貸して、作品の素晴らしさもさることながら、ラーメンという食べ物の虜となる人間を増やしてきました。
ビデオを貸す時は常に、「満腹の状態で観るか、観終わった後、すぐ旨いもんを食える状況で観ないと地獄を見るぞ」とアドバイスします。
さて、Becca Topolというアメリカ人が「タンポポ」を観て大変、感銘を受け、また、ラーメンの虜となりました。
結果的に彼は日本に渡り、実際にラーメン屋で働かせてもらうほど、ラーメンという食べ物、さらに日本人がラーメンに傾ける情熱を愛します。
そして彼が脚本を書き、「タンポポ」公開から23年後の去年、アメリカ映画として発表されたオマージュが
"The Ramen Girl" です。
カワイコちゃん女優、Brittany Murphy演じるAbbyがボーイフレンドを追って彼が働く日本にやってきます。彼のマンションのベランダから見下ろせる近所のラーメン屋の女将さんが足を怪我しているのを目に留めたアビーは志願して店を手伝い始め、結果的に頑固な大将の西田敏行に弟子入りを懇願します。
ダイヤモンド・ユカイの"Tokyo Pop"や、松田優作、高倉健、マイケル・ダグラスの"Black Rain"同様、「ハリウッドが見せたい」日本が描かれていますが、もはや絶滅したと思われる超絶・頑固一徹のラーメン店主の存在感は、「この映画の脚本を書いた人は凄え店で修行してたんだな」と想像力を駆り立てます(笑)。
映画自体がどう、というより、ここまでラーメンを愛し、「タンポポ」を愛してオマージュを作るに至ったアメリカ人がいる、という事実に私は感動します。これは嬉しいよ。
さて、私はフィラデルフィアで19年間、ひとつの店で日本食の板前をしていました。そこはフィラデルフィアで唯一の日本風のラーメンを食べられる店で、国籍を問わず、ラーメン目当てで来てくれるお客さんが大勢いました。
俺のラーメンは南横浜風、と胸を張る大将のWさんはラーメンに対して並々ならぬ拘りを持っています。
Wさんの、自らがこよなく愛した横浜、大船のラーメン屋の味を再現して自分の店で出したいという熱意でもって、うどん、蕎麦に比べて遥かに面倒なラーメンを品書きに加えた訳です。
Wさんが試行錯誤を繰り返して練り上げた、作り方/出し方ですから、お客さんや同業の人間に秘訣を訊かれても、私は基本的なアウトラインだけ教えてあげて、決定的なコツは決して喋りませんでした。
1000ドル程度のはした金で売れるノウハウでもありません。
Wさんは体型的に丸っきり西田敏行でトシは八歳下です。五十を超えてからの八歳違いは同じようなもんなので、西田敏行とダブります。
よってレンタル屋で"The Ramen Girl"のパッケージを目にした時、
「こっりゃあ、出来過ぎだな、おい」と速攻、借りました。
アメリカでは、三食パックのスープ付き生ラーメンを平気で出す店もたまにあります。責任者を呼びつけて「首相撲からヒザ」をかましたくなりますが、ある意味、そういう物に頼らざるを得ない連中がいるのは、それだけラーメンを自分でキチンと作るのは大変なのだということでしょう。
私はラーメンは不思議な食べ物だと思います。
あまり美味しくないラーメンを食べれば口直しに旨いラーメンを食べたくなるし、美味しいラーメンを食べれば、また連チャンで食べたくなります。こういうのは、寿司、焼き肉、鍋物、カレー、他の麺類などにはないラーメンの魔力だと思います。
ネット系のサークルでラーメン・ブログをやってるようなコアなラーメン好きは一日に4軒ぐらいハシゴするらしいし。
昨日、中学以来の友人、S君と我が家で飲んだのですが、ある程度、ビールを飲った後、ラーメンを作りました。焼豚がないのでハムで代用しました。
さて、S君は顔を合わせる度に「痩せなきゃ。なんとかしなきゃ」と言っていますが、焼き鳥屋で皮3本、頼むような「ホントに痩せる気あんのかよ!?」な男です。
よって昨日はわずかながらダイエットの要素を含んだ二者一択でラーメンをこさえました。
「本来ならば、たとえ口だけでも痩せようとしてる人間に夜、ラーメンなんぞ食わしちゃなんねんだが、次の2パターンから1つ、選んでちょうだい。」
A) ハム3枚、生卵、刻みネギ、の、ひと玉ラーメン
B) ハム2枚、刻みネギ、の、ふた玉ラーメン
S君は迷わずBを選びました。
ラーメンを食べ終わってからも、かれこれ二時間ぐらい、U字工事のDVDを観たりしていたのですが、彼は、その間、
「あー、うまかった。あー、ラーメン食いて」X10ぐらい呟いていました。
ちなみに彼は若き日に餃子を120個、食べたことのある強者です。

「たんぽぽ」!。
私も、数ヶ月前、なんだか無性に観たくなって、
レンタルショップで借りました。
メインストーリーも面白いのですが、それに絡みつくように
展開される、食に関するサイドストーリーも抜群に面白い!
フレンチレストランで、かばん持ちの新人が妙に食通で、
役員の面目をつぶすエピソード。
「そうだ、母ちゃん、チャーハンを作れ!」と言われて、
ゾンビのように台所に向かう主婦のエピソード。
歯の激痛を、とんでもないスピードで走る電車と、
何の脈絡もなく、現れた中国娘に飲茶を食べさせられることで
表現したエピソード。
夜のスーパーに忍び込み、柔らかいものを見つけては、
親指でもみしだき、ぐちゃぐちゃにしてしまう老婆のエピソード。
そのどれもが面白い!
初めて観た時、伊丹監督は天才だなと思いました。
「ラーメン・ガール」ですか。早速、借りてみます。
【追伸】
大将がつくる、南横浜風のラーメンも、ぜひ食べてみたいですね!
投稿情報: オーハ | 2009/09/02 17:48
あの死の直前の主婦が作るチャーハンは、よく見てるとネギしか入ってません。
スーパーの指圧婆さんは、伊丹監督がフランスに住んでいた時に目撃した、フランスの主婦達がチーズを買う時のアクションだそうです。
詐欺にあってると見せかけて裏をかいてる自称・東北大教授の北京ダックを口に含んだ瞬間が私、好きです。
あの人は小津安次郎監督作品常連の辺りから妙な存在感があるんですよね。
役所広司のグルメヤクザ・シリーズも面白く、私のアメリカ人の友人達には"egg yolk"が評判いいです。
「タンポポ」に関しては、後でピンで書きます。
"The Ramen Girl"は、その成り立ちが感動的なのであって、タンポポのレベルのカタルシスは期待しない方がいいと思いますが。
投稿情報: たしん | 2009/09/02 18:04
The Ramen Girlはアドバイス通り、娯楽作品として見てみます。
妻もよく「タンポポはアメリカでは評判がいい」と言っていました。
私も見ましたが、唐突なシーン代えに若干戸惑いましたが、
大変楽しく見られました。
もともとラーメン記事を書こうとブログを立ち上げましたが、最近方向性を完全に見失っています(^-^;
コメントにチャーハンの話がありましたが、長ネギとチャシューの切れっ端だけで
かなり美味しいチャーハンをつくる店があります。
妻もここなら納得でした。
投稿情報: Kazu | 2009/09/05 01:46
"The Ramen Girl"は「タンポポ」に敬意を表して山崎努をキャスティングしています。
考えてみれば、「タンポポ」の脇を締めてた渡辺謙も役所広司もハリウッド常連になりましたね。
奥さん、最近、結構、飲めるクチになってきたらしいですね。
投稿情報: たしん | 2009/09/05 02:17