演劇の世界に「時の一致、場所の一致」という用語があるのだと何かで読んだ事があります。
「時の一致」は物語の始まりから終わりまでが一日のうちに展開し、「場所の一致」は物語が一カ所で始まり完結する、というアプローチです。
両方いっしょの場合、始まってから終わるまで同じ日で場所も動かない、ということになります。
代表的なのは"12 Angry Men"(邦題:「12人の怒れる男」)に尽きるでしょう。
私は、このタイプの映画がかなり好きです。
「時の一致」だけの映画でいえば、真っ先に思い浮かぶのが、Matthew Broderickが彼女と親友と三人でハイスクールを一日、サボってシカゴの街を満喫する"Ferris Bueller's Day Off"です。
あと、ごく真面目なハイスクールの男子が不運にも滅茶苦茶、腕っ節の強い転校生に喧嘩を売られてしまう"Three O'clock High"。
「時の一致、場所の一致」は、まず、巨匠、Sydney Lumet監督の作品中、私が観たことのある8本のうち、3本が「時の一致、場所の一致」です。
"12 Angry Men"
"Fail-Safe"
"Dog Day Afternoon"
どれもハンパじゃない面白さです。
"12 Angry Men"(邦題:「12人の怒れる男」)は天才、三谷幸喜が劇団用に「12人の優しい日本人」として抱腹絶倒パロディーを書き上げ、映画化もされています。「時の一致、場所の一致」の方法論の特徴は、台詞が多い、というところに尽きますが、とにかく天才・三谷幸喜の脚本ですから、「こんな、おもしろい映画、観たことねえ!」というレベルの素晴らしさです。
"Fail-Safe"は、絶対に安全(Fail-Safe)な筈の制御装置に誤作動が生じ、ソビエトの核爆弾がニューヨークに向けて発射されてしまう話しです。
ニューヨーク壊滅の推定時間が刻々と迫る中、大統領を筆頭に合衆国のトップ達が繰り広げる会議の模様が手に汗握る臨場感で描かれています。
また、"Fail-Safe"の脚本完成の時点で、公開されていたかどうかは分かりませんが、ほんの少し前に、鬼才、Stanley Kubrick監督の"Dr. Strangelove"も公開になっています。
これは、"Fail-Safe"と全く逆のパターンで、アメリカの核爆弾がモスクワに向けて発射されてしまう話しです。
"Dog Day Afternoon"は、アル・パチーノ主演の銀行強盗物で、恐らく、この映画に影響を受けたのではないかと思われるコメディーに、本木雅弘主演の「遊びの時間は終わらない」と、金城武主演の「スペーストラベラーズ」があります。
どちらも実に面白い「時の一致、場所の一致」です。
銀行強盗物では、Bill Murray主演の"Quick Change"も「時の一致」ですが、この映画が他の三本と違うのは前半で既に、押し入った銀行からの脱出に成功してしまうところです。
同じくBill Murray主演の"Groundhog Day"は、不運なタイムワープにより、目覚めれば永遠に2月2日が続く話しなので、ある意味、「時の一致」でしょうか。
Kevin Smith師匠の"Clerks"も「時の一致、場所の一致」、"Mallrats"は「時の一致」だった筈です。
John Landis師匠の"Into The Night"も「熟睡」に向けての「時の一致」。
他にも、"Elephant", "American Grafitti, "Dazed and Confused", "Suburbia", "Superbad", "The Breakfast Club", "Scenes From a Mall", "Do The Right Thing", などが思い浮かびます。
Jim Jarmusch師匠の"Night on Earth"などは、「時の一致、場所は世界中バラバラ」ということになるでしょう。
それと、私がまだ観ていない/ぜひとも観たい映画では、「台風クラブ」と「ビリーザキッドの新しい夜明け」が、「時の一致、場所の一致」である筈です。
一番、最近、観た「時の一致、場所の一致」は、「キサラギ」です。
自殺したアイドル歌手の一周忌にファン・サイトを通じて知り合った初対面の男五人が集まり、故人を偲ぶ、という趣旨で物語は始まります。そして、一人が「あれは自殺ではなく他殺だ」と言ったことに端を発して知られざる事実がどんどん浮き彫りになっていく、という作品ですが、これはもう絶対のオススメ。
本当はこういうことを言っちゃいけないんだけど、見終わった時の清涼感に我が心を洗われる気がしましたね、私は。
堤真一/SABUコンビの「弾丸ランナー」と「アンラッキー・モンキー」も「時の一致」だった気がします。
この手の映画は、95%、ハズレ無しですが、ごくまれに、しょうもないのが存在します。あえてタイトルは伏せますが、時も場所も動かず、演者が喋り続けてる、あるいは静寂が続く、クダラナイ映画って、ホントに観ていて、つらい!
最後に究極の「時の一致」は"SLACKER"。
この映画は何と!ワンカット!そして多分、ワンテイク!で作られています!
一人が一回、NG出したら全部、撮り直し!という状況で、よくやったもんだな、と心から感心しました。

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