去る8月15日の宇都宮市体育館におけるキックの興行、「宇都宮蹴拳伝vol.3」のラスト3試合はトリプル・メインイベントと名打たれた世界タイトル戦三試合でしたが、大トリは我龍真吾の復帰戦でした。
我龍は昨今の酒井ノリピーに比べればニュースソースとしてはマイナーもマイナーですが、試合の三ヶ月前に池袋にて大麻不法所持で現行犯逮捕されています。その後、不起訴・釈放となり謹慎処分中でした。
今回の復帰戦は試合の10日前に急遽、決まった代打出場です。
我龍とメインの新王者決定戦を戦った地元の昇平は、もともと寒川直喜と対戦する予定でしたが、寒川が持病の消化器系の病気悪化で、やむなく欠場となり、主催者である宇都宮キックボクシング実行委員会は代打選手の選定に入ります。
そして、メインでしかもタイトル戦に相応しい、寒川と同等か、それ以上の実力/ネームバリューの選手ということで、TBS地上波のK-1 MAX出場経験がある、謹慎中の我龍に白羽の矢が立ちます。
結果的に我龍はこのオファーを受けて、逮捕から三ヶ月という異例の短さで復帰する訳ですが、「たった三ヶ月で試合とは反省が足りないのではないか」と言われるのを承知の上で代打出場を承諾した背景には「義」が存在します。
五月の我龍の逮捕によって、同じジム、ファイティング・マスター所属のチームメイト、銀次郎が一月後に決まっていた試合を連帯責任という形で出場辞退しました。高校球児の喫煙のようなものでしょうか。
そして、その時、銀次郎の代打を買って出て試合をしたのが寒川直喜。我龍はこの時の恩に報いる為に寒川の代打を承諾しました。
試合前10日で出場が決定し、きっちりとKOでメインをシメた訳ですから謹慎中とはいえ、トレーニングはきっちり、こなしていたということです。
そして、かの銀次郎もこの夜、我龍の二試合前に登場し、地元・宇都宮の大声援に応えてタイ人を5R、KOで粉砕して世界のベルトを戴冠しました。
当日は前半戦終了後、休憩前に我龍の謝罪の挨拶がありました。リング上で四方に土下座し謝辞を延々と述べた我龍はメインのリングイン後も四方に深々と頭を下げました。
私は、もしかしたら我龍はこの謝罪の延長線の自粛行為として自らのトレードマークの「背面のけ反りメンチ切り」を封印するんじゃあるまいな?と不安になりました。
謝罪/反省と、レフェリーチェックの間の恒例のメンチ切り自粛は全くの別問題です。これをやらないようならプロとしての在り方をはき違えてるぞ!と激しく心配した訳です。
ちゃんとやりました。「背面のけ反り」とは少し違って「正面斜め見上げ」でしたが、ちゃんとやりました。試合前、対戦相手にメンタン切らない我龍真吾なんて、右手でバットを掲げないイチローと同じです。
熱戦の新王者決定戦を3Rに3ダウンのTKOで決めて我龍はライトヘビー級のベルトを巻きました。
もし昇平が勝てば世界戦三試合すべてのベルトを御当地選手が巻くところでしたが、客席の反応は地元の昇平の敗北よりも我龍に対しての「やっぱ、強え」的感嘆の方が明らかに強かったです。
しかも、我龍真吾はコワモテで、ちょいとハッパに手え出すようなことがあっても根はいいヤツです。試合後、記念写真をお願いしたら、元気よく礼儀正しい、ガソリン・スタンドの好青年のような清々しさで私の肩に勝ち取ったばかりのチャンピオン・ベルトをかけてくれました。
と、ここで終わりにすれば美談でまとまって終わりなんだけど私はあえて一言、付け加えたい。
我龍真吾も昇平も、やはり適正体重は72-3キロで、今回の契約体重79キロの試合は、見た目の華の欠如が如何ともしがたかったと思います。プロなら腹筋、割れてなきゃ。
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